映画レビュー!『宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました』とことんまで笑わせる強烈コメディー、その裏に描かれた現代社会への問い

(C)2022 HOME CHOICE CORPORATION,SIDUS CORPORATION,TPS COMPANY ALL RIGHTS RESERVED

韓国の軍人が偶然手にした1等6億円の当選くじ。ところがそのくじが風に飛ばされ、国境の向こうにいる北朝鮮兵士のもとへ渡ったことから、北と南を国境で跨いだ仰天のハプニングへと展開する…

今回紹介する映画『宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました』は、前評判こそ飛びぬけた出演陣の名がないとあまり高くなかったものの、予想外のヒットで韓国やベトナムで大好評を得たシチュエーションコメディ作品であります。

2019年にヒットした韓流ドラマ『愛の不時着』をもじったようなこの邦題タイトル。「なんちゅう名前を付けとんねん!?」とつい目が点になってしまいそうですが、意外にも物語からはこのタイトルでも納得。

隅から隅までとことん笑わせながら、どこか今という時代へのメッセージも感じられる秀作コメディーであります!


【STORY】

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すっかり軍隊生活にも溶け込み、兵役義務終了も間近に控える韓国軍の兵士チョヌは、夜勤で基地入口の守衛業務を行っていたところ、偶然1等6億円が当選した宝くじを手に入れます。

思わぬラッキーに大喜びするチョヌでしたが、その宝くじは彼が浮かれて気が緩んだ瞬間に風に乗って軍事境界線を越え、北朝鮮の上級兵士ヨンホのもとへ飛んでいってしまいます。

かくして南北の兵士たちは宝くじの所有権をめぐり、JSA(共同警備区域)で会談を開きますが……。


【ここに注目】

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近年では『エクストリーム・ジョブ』など、どこかで泣かせようとせず最後の最後、とことんまで笑いを取ろうとするコメディー要素。演じている人はあくまで死活問題とばかり真剣な表情をしているのに、見ている側はとにかく笑いが止まらない。こういったスタイルはある意味韓国らしさなのかもしれません。

一方、その裏で今という時代に問いかける辛辣なメッセージも見えてくるでしょう。

ここ数年、世界では国同士、民族間の争いがニュースの中でかなり目立って報道される傾向が感じられるのに対し、本作品では朝鮮半島の南北の対立というポイントを軸として物語が描かれます。

韓国映画では『シュリ』(2000)などのアクションサスペンスから『プロミス~氷上の女神たち~』などのスポーツ映画まで、北朝鮮との関係を取り上げた作品も実に多く、韓国国内における両国の関係は一つの重要課題として、多くの人が関心を持たれていることがうかがえます。

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そして本作もその両国の関係を背景として描いているわけですが、この物語における争いの原因は、韓国より北朝鮮に飛んで行ってしまった一枚の宝くじ。これは相当な金額の当選くじであり、確かに個人として考えると大きく動揺してしまいそうな要素ではありますが、国という要素で考えてしまうとあまりにも滑稽に感じられます。

普通に考えれば、あくまで「宝くじ」というアイテムは韓国内におけるイベントであり、ここに国同士の争いが絡むというのはどうなのか?という疑問が湧いてくるでしょう。しかしこういった争い、民族間の対立が、同じような状況がないにしてもわりに遠くない状況にあることを考えると、意外に今世で起きている対立構造の原因は、本当に戦争を起こすほどの争いが必要なのか、などとふと考えてしまうでしょう。

また興味深いのは、両国における風習、風俗の表現です。展開的に「南の人が北に行ったら…」「北の人が南に…」という事件が本作では現れるのですが、その光景は韓国映画だけに韓国側からの目線であることは否定できない事実ではあるものの、どこか「相互の理解」という点の大切さを感じさせる要素であるといえるでしょう。

宝くじをめぐって争った南北が、ひょんなきっかけでこの「相互理解」に行きつくという展開は見事で、見る側としてはふと「今、こういった関係が必要なんだなぁ…」などとおぼろげにも感じてしまうに違いありません。

物語が面白いと思えば思うほどに国同士、民族同士の対立という現在の世界状況をふと考えてしまう。もちろん単純にエンタテインメント作品として認識しても遜色ありませんが、ある意味「力を持った」作品であるともいえるでしょう。


【あわせてここも見どころ!】

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そして本作で熱演を繰り広げる役者陣も、韓流ドラマや映画などで名をはせるツワモノばかり。

もともとそれほど話題にならなかったという本作のキャスト陣でありますが、話題にならないのが不思議なほどの実力派が揃っていることはいうまでもありません。

韓国側の兵士である主人公パク・チョヌ役を演じるコ・ギョンピョは、韓国で社会現象すら巻き起こしたドラマ『恋のスケッチ~応答せよ1988~』でブレイク。一見シュッとしたルックスながら抜群のコメディーセンスで頭角を現しています。もちろん演技の実力もピカイチですが、とことんまで笑わしにかかる本作には、まさに「なくてはならなかった」主人公。韓流の知識に疎い人でも、その存在感を見れば確かなものであることは一目瞭然です。

一方、チョヌと対立する北朝鮮の兵士リ・ヨンホ役を演じたイ・イギョンは、ルックス的にはイケメンながらどこかその端々にイモっぽい要素を意図的に混入する巧みさをもっており、その独特の人物像にあった役柄での出演は高く評価されています。

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ほかにも二人の脇を固めるウム・ムンソク、イ・スンウォン、キム・ミンホらは韓流ドラマのトップ・バイ・プレイヤーで、韓流ドラマにハマった人なら「あ、この人見たことある!」と必ず気づくでしょう。それだけに実力もピカイチの存在感で物語を盛り上げます。

また韓国側の兵士キム・マンチョルを演じたクァク・ドンヨンはどちらかというと正統派のイケメン役が多かったのですが、本作ではどこかとボケた役柄に新たな一面を披露しています。

そして唯一のヒロインとなったパク・セワンはもちろんルックスもステキでありますが、役柄のどこか気の強い面をうまく演じているところには、物語の芯を上手くさせている感もあり大役を果たした印象でもあります。ちなみにクァクとパクは本作で直接つながりはないものの、ドラマ『』では熱々のカップルを演じていました。


【作品情報】


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『宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました』

監督:パク・ギュテ

出演:タラ・バスロ、エンディ・アルフィアン、ネイサー・アヌズ、ブロント・パララエ

原題:「6/45」/2022 年/韓国/G/カラー/113 分/

配給:ツイン

公式サイト:https://takarakujimovie.com/


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