23日、広島県広島市のNTTクレドホールにて広島国際映画祭2023が開催、今年も映画祭代表の部谷京子さんが映画祭の開幕を宣言されました。
今年は前身の『ダマー映画祭inヒロシマ』より15周年の節目となる記念的イベントとなり、4日間の予定により「短編映画コンペティション部門」を久々に実施、例年の「レギュラーゲスト」ともいえる片渕須直監督、藤井道人監督らはじめ海外からの来場含めた多くのゲストも来場するなどのプログラムも充実。またフードコートなども催されボリュームたっぷりの開催となりました。
オープニングではレッドカーペットも実施され、ゲスト陣の登場に会場も大いに沸きました。そして多くの来場者の前に、ステージに登場するなり感極まった表情を見せた部谷さんでしたが、「広島の過去、現在、そして未来に向けて、世界中の皆さんとともに広島に寄り添う映画祭です!」とこのイベントについてコメント、昨年に引き続き今年も笑顔で右腕をしっかりと掲げ、高らかに開幕を宣言されました。
また映画祭には広島県広島市の松井一實市長は今回も登壇、5月のG7サミットで世界からも大きな注目を浴びた広島で行われるこの映画祭に対して、部谷さんをはじめとした実行委員会やボランティアへの敬意を表しながら「この映画祭にご来場頂いている皆様方には、ぜひ広島の平和への思いを共有してもらいたい」と映画祭へのエールとともに、切なる広島の平和への思いをアピールされました。
なお、開会式に先駆けて行われる原爆死没者慰霊碑の献花は、今年より韓国人原爆犠牲者慰霊碑の方も行われたとのことでした。
広島国際映画祭2023は、広島県広島市のNTTクレドホール、広島市映像文化ライブラリー(23,25,26日のみ)、横川シネマ(23,24日のみ)にて11月23日~26日に開催されます。
<でみを’s EYE>
(2023/12/12 更新)
11月23日日より4日間にわたり行われたイベントは無事終了、8651人の総来場者数で盛大に終了しました。
2020年に発生したコロナ禍の混乱の中でも歩みを止めず、規模を縮小して行われたこのイベントですが、今回はようやく通常規模の開催に戻り、クレドホールのフロアでは出店も並んで賑わいを取り戻していました。
印象的であったのは、やはり代表である部谷京子さんの挨拶。これまでは挨拶となると映画祭のテーマに絡めた講和を述べられるケースが多かったように見えましたが、今回は開会式、閉会式ともにこの時を迎えられた感謝の言葉に終始していた印象であり、そこにはやはりこの15年にわたる道のりにおけるさまざまな出会いがあってのことといえるでしょう。
すでに映画祭ではレギュラーゲストともいえる藤井道人監督、そして韓国のキム・ジョングァン監督はいずれも広島国際映画祭の前身である「ダマー映画祭inヒロシマ」で行われた短編部門コンペティションでノミネートを果たしたこともあり、非常にイベントとのつながりも強い映画監督。
藤井監督は昨年、映画『余命十年』の出演者である小松菜奈さん、坂口健太郎を伴っての登壇を果たし、部谷さんに「これで少しは恩返しできましたかね?」と語りました。そして今年は、部谷さんの念願ともいえた横浜流星さんが登場。
さらにキム監督は映画『夜明けの詩』に出演のイ・ジュヨンさんと揃っての登壇。他にも毎年来場の片渕須直監督、部谷さんが以前お仕事の関連で偶然知り合うことができたという、映画『愛と死の記録』を手掛けた 蔵原惟繕のご息女・梅澤文子さんも登場。
そして部谷さんと15年前に出会ったという濱口竜介監督。閉会の挨拶で部谷さんが「2009年、私はあなたと、あなたの作品『パッション』に出会った日のことを忘れません。そしてあれから15年、あなたは『世界の濱口』になりました」と語ると、会場から湧き上がる惜しみない拍手の中、濱口監督は少し感極まった表情を見せていましたところが忘れられません。
映画祭と呼ばれるイベントは、どうしてもイベントに登場する作品、そして来場するゲストという単一的なポイントに焦点が向く傾向になりますが、このように「客観的な視点で作品がどのように評価されているか」というポイントよりも、本イベントはむしろ人同士の繋がりが感じられるゲスト陣であり、本映画祭はさまざまな立場における映画人同士の強いつながりの大切さを深く感じさせられるようでもあります。
今回は久しく開催を見送られていた短編コンペティション部門が行われました。この部門で「審査員賞」の発表を担当されたキム監督は「私も7年前、このコンペティションにノミネートされましたが、受賞はできませんでした。だから私は(受賞されなかった)あなた方の味方です!」とコメント、観衆より拍手と笑いを受けていました。
冗談っぽいコメントではあるものの非常に大切なこと、つまり「このイベントに参加できたこと、そして新たなつながりを持てたことが、すでに大きな名誉である」ということを示しているようにも見えました。
その意味では、広島国際映画祭は他に開催される別の映画祭とも異なる特別な性質が感じられ、ここで見えてくる映画を通じたさまざまな人同士のつながりは、映画単品だけでは見えない深い物語を感じることができるといえるでしょう。
この文章の中で紹介し切れなかったその他のゲストについても、この映画祭に参加できたことが今後の人生の中で新たな糧となることは、想像に難くありません。15周年という節目から新たなスタートを切ったこの映画祭。非常に興味深いポイントも多く存在するだけに、ますますの発展を期待していきたいところでもあります。
(文、写真:黒野でみを)
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